航空留学に関するご質問にQ&A形式でお答えします。
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航空留学QandA

Q.自家用ライセンスだけでパイロットとして就職することは可能ですか?

(2009年11月1日加筆訂正)
A.日本の航空法では自家用操縦士の業務範囲を「報酬を受けずに無償の運航を行うこと」として規定しており、すなわち、会社からパイロットとしての報酬を得ず、かつ「顧客」からも料金を受けない、ということが前提となっています。(アメリカでも基本的に同じ解釈ですが、その法律の中で「例外規定」が具体的、かつ柔軟に織り込まれていて、きわめて現実に即したものとなっています。) しかしながら日本国内の「業界」の事情としては、例えば飛行機に乗り組んでグライダーの曳航などを長年「業」としている自家用操縦士、空中写真撮影を「業」としている自家用操縦士、ヘリコプターの操縦教育を「業」として事業用操縦士の育成に実績を上げてきた自家用の飛行教官(JCAB/日本航空局 操縦教育証明保持)など…、少し不思議な感じがしないでもないですが実態はいろいろ盛んです。

敢えて文面化してしまうと「弊害」が生じる可能性もありますが、特に空中写真撮影などの業務では、顧客に対して「航空機の運航それ自体を売る」、すなわち「空中撮影などを目的とする運航を請け負う」ということではなく、「空中写真を売る」という考え方であれば、その運航は「商品は有償/運航は無償=自家用運航⇒合法」として解釈されることになり、そしてその場合、当該自家用操縦士がその会社から「飛行手当」ではなく「撮影手当」などの名目で報酬を受けるのであれば何ら問題はない、ということになります。

実は当の事業用操縦士でさえ誤認識していることが多い奇妙な現実があります。 日本の航空法では、事業用操縦士の業務範囲を「報酬を受けて無償の運航を行うこと(ん? ワケわからない…ですよね。)」と規定していて、このことは、すなわち事業運航会社に所属(当該事業用操縦士が乗客に対して「無償」の立場でも、会社自体は「有償」で運航するわけで、パイロットとしての「報酬」がそこから支払われることになります。)しているか、または「公務員パイロット」や報道機関(新聞社の場合はすなわち「新聞」という商品が「有償」、運航自体は「無償」…。何それ?!)などのパイロットとして飛ぶことのみを想定しており、例えば自家用機を自社保有する空中写真会社などに所属する場合には、会社から支払われる報酬を事業用操縦士は「飛行手当」の名目で受け取ることができたとしても、その会社自体は事業運航会社ではないので顧客に対して料金請求できない!? というような自己矛盾に陥ってしまいます。 つまり、たとえ事業用操縦士の資格を持っていても、実質的には顧客に対して何らかの形で料金を請求する以上、事業運航会社以外の企業でパイロットとして働く場合には、その「事業用操縦士」としての「業務」自体も結局のところ非合法…ということになってしまい、自家用操縦士との間に何ら差異は生じないことになるわけです。 世の中に企業の自家用運航は数知れず、そして趣味や純粋な社用のみを目的として飛ぶ…などという恵まれた(??)環境はまず望むべくもないのであって、ある意味「道理」として、幾多の「無償」運航が「合法」的に「有償」で行われることとなります。

しかしながら、そうした反面、日本の法律では「まさか」と思うほどイージーな「抜け穴」というのもあるのです。 例えば、飛行教官(CFI)の資格を取得するための要件として、日本では堂々と自家用操縦士の資格のままでも構わないこととなっているのです。 資格取得の周辺事情を考慮した総合的な「難易度」の問題は別として、アメリカなどでは飛行教官になるために、まず事業用操縦士であることが求められますが、日本では航空身体検査証明さえ自家用操縦士基準のままでOKです。 まず自家用ライセンスを取得して経験を積みながら飛行教官コースのプログラムを修得し、その後自家用のまま飛行教官としてデビューを果たす…、ということは、特にグライダーやモーターグライダー(その性能たるや、今ではセスナなど一般の小型飛行機を凌駕しています。)の世界では普通のこととなっています。

これら一連の法解釈については、特に日本の航空法における自家用/事業用の分類基準そのものに根本的な矛盾が内在することが明らかであり、一方、しっかり明文化を図っているアメリカなどとは事情が異なって、日本で例えば事業用ライセンスを取得するのであれば(少し乱暴な言い方をすれば)、自家用ライセンシー(の例えば飛行教官)としてそうした形での「実務経験」を積んでからでもよい、ということがいえるかもしれません。  自動車の世界でいえば初心者マークの人がいきなり2種免許を取得してタクシー・バス会社などで乗務しているというようなケースはないのであって、むしろそうした「業界」の実情(まず自家用で経験を積む、という意味)というものは自然、かつ健全なことではないかと考えられ、したがって「事業用操縦士のライセンスなしでは業務上飛べないのでキャリアを積めない…」という発想は必ずしも現状を反映してはいない、ということになるのではないかと思います。

アークEFIでは事業用コースのご修得に係るご意志の有無に関わらず、その方ご自身の「リスクコントロール」を目的として、何方にもまずプログラムの基幹部分となる自家用コースのご修了を「サブ・ゴール」とし、その達成時点において、ご自身で改めて見直しを図って頂いた上で、その後のサポートをお受けする… という方式を採っています。(この時点で実際に、例えば「飛行機コース」から「ヘリコプターコース」に、また「JCAB事業用コース」から「FAA飛行教官(CFI)コース」に変更なさったり、または「学科教官(AGI)コース」プラス、複数の航空機カテゴリーについて自家用ライセンスを取得なさったり、というような展開は少なくありません。) したがって事業用コースの費用などは自家用コースご修了以後に完全に分けてご準備願うこととしています。

自家用ライセンスの取得だけでもその準備に最短1ヶ月、海外現地2ヶ月、そして海外で取得したライセンスを日本のライセンスに書き替える手続きにも約半年と、プログラムの進展には長期を要し、その間に社会環境やライセンス書き替え関連の法基準さえも変わり得るわけです。 かといって、いったいどう変わるのか? という「不確定要素」について、確たる根拠もなく「悲観的」な方向に論じることは敢えていたしません。 私どもでは航空の「本流」があくまでもその本場アメリカにあり、日本の航空界は近い将来、ほぼ完全に「アメリカ化」するものと確信しています。 したがって、まず自家用コースを修得し、将来を見極めながらその可能性を育てていく(「走りながら考える…」というパターン)、というのがその「基本姿勢」とするところです。 最初から「事業用就職」ばかりが固定観念化してしまうと、「助走」の段階から疲れてしまい、肝心の「ジャンプ」に至ることができなくなってしまうのではないか、という懸念も禁じ得ません。 どうかリラックスして、まずは純粋に「空を飛ぶことのすばらしさ」を謳歌しようではありませんか!


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